2016年6月20日月曜日


【図説】映画「10クローバーフィールド・レーン」ネタバレ感想レビュー

嘗てPOV(一人称視点)パニックムービーとして話題を呼んだ「クローバーフィールド HAKAISHA」。

その続編である「10クローバーフィールド・レーン」が公開されたので、早速観てきました。
前作とは違い監督はダン・トラクテンバーグ、制作はJJエイブラムス。

先に言っておきますが、今のところ2016年上半期で最もガッカリした映画となりました。。

ブレアウィッチ2、サイレントヒル2、バタフライエフェクト2、CUBE2、といった、
「1が名作だったのに何で2はこんななった…!」系の映画と個人的には同ランクです。

何故名作の続編でここまでガッカリすることになったのか、解説して行きましょう。


この記事には重大なネタバレが含まれるため、ご覧になる方はその旨をご理解の上お読み下さい。






公式予告編はこちら。
もう一つ、オチまでばっちり映っている予告編がありますがこちらは映っていません。


ストーリー解説

簡単にストーリーの流れを説明すると、

■主人公ミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は恋人と喧嘩をしてしまった様子で、
彼の元から去ろうと、夜の道路を車で走っている。



■すると突然車は激しい衝撃を受けクラッシュ、ミシェルは気絶してしまう。
どうも何かに衝突されてしまった様子。

そしてどれくらい経った頃だろう、目が覚めると彼女は謎の地下室に幽閉されていた。



ちなみにこのメアリー・エリザベス・ウィンステッドさんは「遊星からの物体X:ファーストコンタクト」の
主人公役でもあった女優さん。眼力のある、美人且つ可愛らしい女優さんです。



■脚には鎖、腕には点滴が繋がれているという謎な状況。
しかしそこへこの敷地の主と思われる男性、ハワード(ジョン・グッドマン)が登場。

彼いわく、「外の世界は大気汚染されていてもう壊滅してしまっている。
しかしこの家は汚染の影響を受けること無く安全で、自分は君を保護してやったのだ」と。





■当然視聴者もミシェルもその言葉を鵜呑みに出来るはずもなく、彼に抵抗するなどして
なんとかここからの脱出を試みるのですが、ハワードはどうも危害を加えてくる様子もなく、
怪我が治ってくるのに合わせてミシェルにある程度の自由を与えてくれるように。

そしてこの段階で、この家にはもう一人他の男性が
保護されている事が明らかに。彼の名はエメット(ジョン・ギャラガー・Jr)。





■ハワードのシェルターでエメット、ミシェルの合計3人での共同生活が進む中、
小さな窓から外で表面がグズグズになって死んでいる家畜と、
自身の車に最初の場面で突っ込んできた車を見てしまうミシェル。

彼女がこの部屋に幽閉されるきっかけになった車のクラッシュは、ハワードの車のせいだった
事が明らかに。やっぱり彼は信用できない、と心境が変化するミシェル。



■ミシェルはある日の食事の最中、ハワードを突然瓶でぶん殴り、外部への脱出を試みる。
鍵を奪いシェルターの扉へと到達した彼女だが、丁度そこへ外の世界の生存者である
女性が、窓にへばりつくようにして助けを求めにやってきた。

家畜と同じく皮膚がただれてしまっている彼女は、ドアを開けようか迷っているミシェルに対し、
次第に「さっさと開けろ!ビッチ!」と激昂しながら頭を打ち付けてくるように。
「絶対に入れるな!」というハワードの言葉もあり、結局ミシェルは開けることが出来なかった。



■ハワードは「先ほどの女性は隣人のレスリーで、君の車に衝突したのは自分の責任だ、
奴らの襲撃で気が動転していてマトモな運転が出来なかった」と告白。

そして彼の妻と、娘のミーガンは”襲撃”に合わせてシカゴへ行ったとも。
ハワードは、もう妻子が死んだと思っている様子。



■シェルターでの生活に慣れてきた頃、換気システムがダウンするトラブルが起きる。
システムを再起動するためのレバーへ、換気ダクトを通って向かう事になるミシェル。





■しかし彼女はレバーのある屋根裏部屋的な部屋で、あるものを見つけてしまう。
それは「HELP」と強化ガラスに内側から書かれていたメッセージと、
血のついた女性物のイヤリング。



■その話をエメットにするミシェル。
彼女はハワードが見せてきた娘・ミーガンの写真をエメットにも見せるのだが、彼の口からは
「いや、これはミーガンじゃない…自分の妹と同じ高校のブリトニーだ」と驚きの内容が。

ブリトニーは2年前に失踪しており、写真の中のブリトニーはミシェルが屋根裏部屋で見つけた
例のイヤリングと全く同じものをつけていたのだった。



■やっぱりハワードは悪人だった、妻子の話は嘘で、ミーガンを誘拐し
ここに同じように幽閉していたのでは…?という疑惑が一気に加速する。

ミシェルとエメットは秘密裏に防護服を作り、ここから脱出することを決意。



■密かに防護服作りを進めていた2人だが、ある日2人の言動が怪しいことを察知した
ハワードは、樽いっぱいの過塩素酸塩の前で2人を問い詰めるのだった。

ハサミと糸を見せつけられ問いつめられた2人だが、エメットがミシェルをかばう形で
「あんたの銃が欲しくて、武器を作って奪おうとした」と白状。

謝罪をするエメットだったが、なんとその場でハワードに撃ち殺されてしまう。



■善人?→悪人だ!→いや善人?→やっぱり悪人だ!の流れを繰り返し、
ようやくハワードがヤバいおじさんだという確信を得たミシェル。

防護服自体はまだ見つかって居なかった彼女だったが、
寝室の布団の下からはみ出ていた防護服をハワードが発見してしまう。

こうなったら今脱出するしかない、とミシェルは過塩素酸塩の入った樽を倒し、
ハワードにぶっかけながら逃走。

過塩素酸塩のせいでケーブルが溶けた家電製品のせいで火の手があがる。
ミシェルは外界とシェルターを隔てる最後の扉の鍵をなんとか壊し、防護服を着て外の世界へ。



ここからがクライマックスなんですが、ここまでで1時間25分経過しています。
エンディングを除けば、約1時間35分の本編中、1時間25分がこの家の中。




■外は今までと変わらない田舎の原っぱだが、誰の声も聞こえず、人っ子一人居ない。
これが大気汚染の結果なのか…と思われたが、空を鳥が元気に飛んでいるのを
発見するミシェル。

恐る恐る防護マスクを外すが、特に身体に影響は見られない。
大気汚染という情報は一体何だったのか…!?



■次の瞬間、ハワードのシェルターが火災によって爆発。
それと同時に遠方から飛んで来るヘリコプター…かと思いきや、それは見たこともない
宇宙船のような物体。

ハワードの車はキーがなくエンジンがかからず、隣家のレスリーの車に乗ろうとするも
防犯システムが作動、けたたましいアラーム音が周囲に鳴り響く。

あたりはいつの間にか夜の闇に包まれていた。



■近くの小屋に急ぎ逃げこむミシェルだが、小屋の中から先ほどの車を大きく揺する
何者かの姿を見てしまう。どうもそれがハワードの言っていた「襲撃してきた奴ら」のよう。

隙を見て明かりの付いていた隣家へと駆けるミシェルだが、
明かりのように見えたのは巨大なエイリアンの宇宙船の発光だった。

逃げるミシェルと、追う宇宙船。



ハワードが言っていた大気汚染というのは実はこの宇宙船が放つガスのようなもの。
これを食らうと地球上の生命体は徐々に死に至る様子。



■エイリアンは地上に1匹、上空に宇宙船が1隻という編成。
ミシェルは更に別の車に乗り込むが、地上エイリアンが襲いかかる。

地上エイリアンはミシェルの顔面に食らいつくも、防護マスクのせいで思うように攻撃が出来ない。
結局防護マスクに吸着攻撃し、どこかへ去ってしまう。

宇宙船はというと車を触手のようなアームでがっちりキャッチ、徐々に船体に引き寄せていく。



複数ある予告編の1つにおもいっきり姿が映ってるんですが、これがラスボス宇宙船です。



■もうダメか…と思われたが、ミシェルは車内に酒瓶と雑誌があるのを発見。
これを使ってモロトフ火炎瓶を即席で作り上げ、宇宙船の口の中へと放り込む。
これが大爆発を起こし、宇宙船は見事墜落。

ミシェルは車ごと落下するも無事、更に他の車に乗り換えて、その場を後にするのだった。



■ようやく道路に出たミシェル。この時ポストを弾き飛ばすのだが、
このポストに書かれていた住所が「10 Cloverfield(10クローバーフィールド)」。
ちなみに前作の「クローバーフィールド」も同様に、エリアの名前でした。



■カーラジオからは「避難場所はノースブリッジ、医療従事者か戦闘経験者を募っている
ヒューストンに生存者がおり、沿岸南部は奪還、私達が勝っています…」という旨の放送が。

正面方向はボストン、左方向はヒューストン。
ミシェルは迷わずヒューストン方向へと向かうのだった。

そして行く先には、雷の稲光の中、更に巨大な宇宙船がその影をチラつかせていた…。


END


あいろん的感想


この映画が個人的上半期最ガッカリ映画になってしまった要因として大きいのが、、

「続編なのに前作を下回る派手さとストーリーテリング」
「明らかに調整をミスっている時間配分」
「5年ほど前に流行った宇宙人系映画ブーム作品と変わらないデザイン、内容」

の3点でしょうか。



■「続編なのに前作を下回る派手さとストーリーテリング」

これは続編失敗系の映画によくある話ですが、前作のファンであれば
これがエイリアン襲撃系の話、というのはもう常識的な情報として共有しているわけです。
加えて前作ではエイリアンの登場も非常に早く、ちっこいエイリアンや、エイリアンに
噛まれた末に人間がどんな死に方をしてしまうか、などのシーンも豊富に描かれていました。

自分が好きな映画監督の1人にジェームズ・キャメロン大先生がいらっしゃいますが、
彼の撮った傑作「ターミネーター2」や「エイリアン2」では「1で登場したターミネーターや
エイリアンという常識化までしてしまった存在を、2では1と大きく違った方法で魅せる」と
いうことをきちんとやって下さっているのも名作たるポイントではないでしょうか。

昔の映画ではありますが「プレデター2」にしろ、もうプレデターという存在は映画界で
「ああ、あの人ね」くらいの存在にまでなってしまっていたはずです。

1では密林というフィールドでの戦闘でしたが、「じゃあこの子が都会に来たらどうなるの!?」
というのが2ではやはり面白かった訳です。ジェイソンNYへ行く、なんかもそうですね。

記事の冒頭で挙げましたが、10クローバーフィールドレーンもブレアウィッチ2や
サイレントヒル2などと同じように、視聴者側としては「もうそれは知ってるんだよ…!
知ってるんだからさっさと行くなり出すなりしてえ…!」と叫びたくなった方も多いと思います。。

前作ではあれほどまでに出てきたエイリアンが何故今作ではラスト10分、しかも
ほぼチラ見せという形でしか出てこないのか。

監督がそれほど有名ではないというのも予算がかけられなかった理由なのかも
しれませんが、JJエイブラムスが制作に参加しているのですから、もっと
ド派手なエイリアンムービーにしてくれてもよかったのでは、というのが正直な感想です。



■明らかに調整をミスっている時間配分

約1時間35分ある本編で、ジョン・グッドマン演じるハワードの家にいる時間が1時間25分。
もう彼がエイリアンで良いです。そっちの方が良いです。



5年ほど前にはやった宇宙人系映画ブームと何も変わらないデザイン、内容

約5年ほど前でしょうか、例えば「カウボーイVSエイリアン」「世界侵略ロサンゼルス決戦」
「バトルシップ」「スカイライン」「スーパー8」などの宇宙人映画が妙に量産された時期が
ありましたが、どの映画も大体似たようなデザインの宇宙船だったりエイリアンが
出てきたりします。

そんな中でも「第9地区」や「宇宙人ポール」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」といった
良作も出てきていたのですが、10クローバーフィールドは5年前の宇宙人映画ブームに
量産された作品たちに埋もれてもおかしくないレベルの宇宙人映画だったように感じます。

「もっと沢山見せて欲しかった」というのが最後に残った感想でしょうか。

良かった部分はキャスティングと演技の面

あまり一方的に悪く言うのも宜しくはないので、良かった部分の紹介。

個人的にいいなと感じたのは、ややマニアックなキャスティングの部分。
メアリー・エリザベス・ウィンステッドは同じくモンスターパニック映画である
「遊星からの物体X:ファーストコンタクト」で主人公を好演した女優さん。

ジョン・グッドマンは80~90年代から活躍する名助演男優で、
今回も善人なのか悪人なのか最後まで分からないミステリアスな雰囲気が素敵でした。
彼らのファンの方であれば、見ておく価値はあるでしょう。

そうでない方で、前作の熱狂的なファンという方には
やはり物足りない1作、というところに評価が落ち着きそうです。


もしご覧になった方でご意見・ご感想などありましたら、コメント欄に
お気軽に残していって下さると嬉しいです。



1 件のコメント:

  1. 予想外の展開にとても楽しめましたし、この映画は今でも私の記憶に残っています。
    時間配分も含めた不透明な内容からの怒涛のラストについてはミスではなく明らかに製作側の意図でしょう。
    受け取り側の捉え方の差はあれど、少なくとも~系でひとくくりにするような内容ではなかったのでは?
    自分にとっては観ている側も騙されるようなつくりがうまかったなぁと思っています。ラストのあの少ない時間でも真実の行方が二転三転する展開に目が離せませんでした。活動空間の転換、意識の転換(ハワードの善悪性、逃げる気持ちから戦う気持ちへなど)、さらに戦おうとする対象の転換がパタパタと変化するように織り込まれていてハラハラしながら見れたので自分にとってはガッカリな映画ではありませんでした。むしろド派手で似通ったエイリアンムービーに埋もれる映画でなくて逆によかったと思っています。自分の評価は高いです。

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